リー・ダニエルズ『大統領執事の涙』

大統領の執事の涙 [DVD]

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いい映画だった。ホワイトハウスに34年間務めた黒人の執事の物語。黒人が平等を獲得するまでの歴史が描いている。セシル・ゲインズという黒人の執事が、ホワイトハウスで働く一方で、彼の息子は人種差別の現状に疑問を抱き、親元を離れ、キング牧師マルコムXといった実在の指導者たちと公民権運動にのめり込んでいく。白人に仕える父親と、運動にのめり込む息子。酒に溺れる母親とベトナム戦争に送り込まれる次男。よくよく考えたら悲惨そのものなんだけど、重苦しく描いているわけでもないところがよかった。

そのような真逆の考えを持つ親子だから、一時は断絶してしまう。しかし父親は公民権運動が政治に影響を与えたことを実際に目撃し、息子はふとした場面で黒人の執事が黒人の印象を変えてきた歴史を知る。もちろんそのようなことでお互いが許しあえるような生半可な話ではない。しかし時代の激流に飲まれた人も、それとは違う場所にいた人も、それぞれの場所で戦っていた。そういうふうに描いていた。