Smashing Pumpkins『Mellon Collie And The Infinite Sadness』

多分「ネットの音楽オタク〜」みたいな記事を作った反動だと思うけど、今の音楽に興味が持てなくなり、しばらく音楽そのものを聴かなかった。その後、ジャズとかクラシックを聴き始めてそれは今でも続いているけど、それと同時並行でブックオフの250円コーナーで洋楽を買い漁ったり、TSUTAYAで名盤を借りたりしている。

そんな中、Smashing Pumpkinsことスマパンの『Mellon Collie And The Infinite Sadness』を聴いたら結構おもしろかった。

これは1995年リリースの作品で、それはもう名盤中の名盤で900万枚売り上げた。でも僕は当時音楽自体を聴いていなかったし(だって小学生だったし)、多分2000年代後半くらいに「スマパンを聴いてみよう!」と思い、YouTubeかどっかで聴いてみるも「つまんねー」と箸にも棒にもかからなかった。そして今聴いたところで、興奮して叫びながら走りたくなるような即効性のある作品ではないと思う。

しかしアルバムを聴いていると、このアルバムが今の日本のロックにどれだけ影響を及ぼしているのかが見えたし、そういう「元ネタの宝庫」としてこのアルバムを楽しむことができると思ったら、「くりごはんが嫌い」のカトキチさんがすでにブログに書いていた。


Mr.ChildrenくるりELLEGARDENthe HIATUS……、もうそれだけで自分が大好きなミュージシャンにどれほど影響を与えているかがわかるような。

ただ、残念ながら何度聴いてもミスチルの「Worlds end」の方がスマパンの「Tonight, Tonight」よりもいい曲だと思う。

まあこれはもう「どちらを先に聴いた」とか「言語」「好み」などあらゆる要素が影響する問題。だから「それは間違ってる!」とか「パクリだ!」という話でもない。

ただ、この「Tonight, Tonight」が収録された当のアルバムは邦題が『メロンコリーそして終りのない悲しみ』となっていることからわかるように、かなり終末感が漂うというか、終末すら訪れない絶望感が漂っていて、それが2枚組2時間超という大ボリュームにつながったのではないか。

 

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このアルバムがリリースされたのは前述のとおり1995年。ジャンル的にはオルタナティブ・ロックに括られるが、そもそもこの頃からロックというフォーマットそのものが成熟しきっていたのではないのだろうか。2000年に『Kid A』をリリースしたトム・ヨークは「ロックなんてゴミ音楽じゃないか! 僕はゴミだと思う」と言った。 

Kid a

Kid a

 

そしてロックはそれ以前のようなスターなのかが曖昧なまま、ロックフェスティバル時代に突入。アークティック・モンキーズアーケイド・ファイア、それからVampire Weekendのようなバンドを輩出。 

The Suburbs

The Suburbs

 
AM

AM

 
Modern Vampires of the City

Modern Vampires of the City

 

かたやColdplayのような、一時は「レディへのパクリ」と言われたバンドがフェスのトリを飾る時代になる。 

Viva La Vida

Viva La Vida

 

さて、00年代、10年代以降の動きを見て、ロックというフォーマットそのものが刷新した印象はあるだろうか?残念ながら僕にはそうは思えなかった。ロックが強固な物語性を失い、フェスで一夜の夢を提供する娯楽の装置になりつつある現状があるように見えた。

そして日本でもその動きは顕著で、まさにSEKAI NO OWARIがロックをエンターテインメントに昇華しようとしている。

Tree(初回限定盤CD+DVD)

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僕は最新作についてはかなり好きなのだが、これが「ロックか?」という聞かれたらさすがに首をひねらざる得ない。「逆説的にロック」という主張には頷けるのだが、旧来のロックサウンドを刷新した作品ではないと思う。ただ結局はコールドプレイだって似たようなものだから、そこをセカオワに求めるのは間違っているのはわかっている。

 

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話を戻すと、実はこのスマパンのアルバムを手に取る理由として最も大きかったのが、今から10年以上前、このアルバムと同じ「終わりなき哀しみ」というコピーでに登場した浜崎あゆみがこの作品について言及していたから。

さっき聴いてた『メロンコリー』の帯にさあ、"終わりなき悲しみ"って書いてあるじゃないですか。その言葉がなんかすごく好きだったんだよね、初めは。曲とかじゃなくて。開けてもなくて、ただ見た時に。"終わりのない悲しみ"という言葉がすごく好きで、なんだろうって思って、聴いてーーー『あ、帯、正しい!』とか思って。

サウンド的に影響を受けたとかそういうものではなく、ただただ日本盤のキャッチコピーに共鳴したという話なのだけど、個人的に今回、ようやくスマパンのこのアルバムを聴いて、それこそ2000年ごろの浜崎あゆみの音楽が、あまりにスマパンと共鳴しているというか、見ている風景が似ている気がしてびっくりした。

ただ根本的に違うのは、スマパンが内面的にもサウンド的にも閉塞感を表していたのに対し、浜崎あゆみはサウンドのフォーマットの制約がないところが明確に違う。浜崎はデジロックというある種のキワモノをポップミュージックに昇華させていたのだが、この頃はかなりうまくいってたのに対し、スマパンのサウンドは、ある種の抜けの良さを感じさせつつも、どこか煮詰まっていた先を見渡せなかったように聴こえる。スマパンはその後数年で転落し、解散してしまった。

 

関係ない話だけど、浜崎あゆみを聴いていたせいか、Lady Gagaが出てきた時、「USでも浜崎あゆみが出てきた!」と思った。サウンド的に新しくなくても、宗教性や物語は更新される。

だけどロックそのものはいまだ終わりのない悲しみの中に。