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ディアオ・イーナン『薄氷の殺人』

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観てから一月くらい経つけど、そのくらいこの映画については何を書いても失敗しそうだったので放置していたのね。もうこれが今年のナンバーワンだと言いたいし、観に行ける環境にいる人は絶対に観に行ったほうがいいよ。

ただ、今でもどう書けばいいのかわからない。あまりにつかみどころがなくて。本当に優れた映画というものはどこか一部分を取り上げて褒めることができない。あの場面が良かった、あの俳優が上手、演出が見事、それらはすべて映画にとって大事なことだと思う。しかしそれらが結びつき、まるでひとつの生き物のように形をなした場合、一体どこを褒めればいいのかわからなくなってしまう。僕が観たこの映画は一体なんだったのかと。

村上春樹の初期の大傑作『ダンス・ダンス・ダンス』に登場するキャラクターである羊男はこう言う。

踊るんだ。何も考えずに、できるだけ上手く踊るんだ。あんたはそうしなくちゃいけないんだ。

ダンス・ダンス・ダンス(上) (講談社文庫)

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話に脈略がなさ過ぎて申し訳ないが、この映画に登場する人物は皆が皆、上手く踊っている。リズムを合わせ、正確にターンを描いている。

次から次へとわからないことが起こる。映画の中の主人公はそれに踊らされるし、見ている僕らも踊らされる。一体何が起きているのか、どういう意味があるのか。見ている最中はまったくわからない。しかし、それがとても心地よいのである。僕らはその得体の知れない物語に引きこまれながらも、そこに対する不快感はない。あるのは心地よい緊張とリズム。リズムが僕らを留めるのである。

映像、物語、演技、音楽、どれをとっても一級品だ。特に映像は北野作品で撮影監督を務める柳島克己に通じるものがあった。犯罪映画という意味ではニコラス・ウィンディング・レフンの『ドライブ』に近いかも知れない。

ドライヴ [Blu-ray]

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でも個人的にはそれさえも超越している。すべては「リズムがいい」としか言いようがない

2005年の第1稿と2012年にでき上がった最終稿では、音楽のジャンルで喩えるならロックからジャズになったような、まったく別の作品になったと言ってもいいほど変わったのですが、それでも自分が表現したかった主題はそのまま残っています。

劇中音楽で使われているわけではないのだが、やはりジャズなのである。どこに導かれるのかわからないけど、それが不快ではない。とても心地よく、脇道の即興にさえも心を奪われる。決して難解ではなくむしろ話の筋自体は単純だ。だけど魅せてくれる。おそらく2015年のベストムービーだと思う。レンタルになってからでもいいので、ぜひ一度!