クリント・イーストウッド『ジャージー・ボーイズ』

いい映画だったと思うけど、公開当時の「日本では過剰に評価されてる」論争や、「イーストウッドではなく原作が優れてる」論争とか正直どうでもよかったかな。

元々舞台の作品という性質上、歌が物語を加速させる装置として使われるのは原作譲りだと思う。また、主人公をはじめとしたそれぞれの人物の人生の浮き沈みが激しいのも、脚本が凝っているわけでもなく、多分元々そういう話だから。だからイーストウッドの映画監督としての手腕よりも『ジャージー・ボーイズ』という物語を評価しようとする人たちの気持ちがわからないでもない。

ただ、だからといってイーストウッドの演出が優れていないかといえば、そんなことはない。良くも悪くも淡々と、同時に原作の魅力を損なわずに映像化した手腕は評価すべきだ。絶対に撮らなかっただろうけど、スコセッシが監督じゃなくてよかったよ。

どこまで脚色されているのかはわからないんだけど、やはり「Can't Take My Eyes Off You」という屈指の大名曲が生まれた背景は生半可ではなかった。バンドは解散状態に追い込まれ、多額の借金を背負い、過程は崩壊し、娘が薬物で命を落とす。

そんな悲惨以外何物でもない彼を励ますために相棒が生み出した大名曲。椎名林檎Ken Yokoyamaのカバーも悪くはないけど、やっぱりFrankie Valliのオリジナルが一番しっくり来る。