サザンオールスターズ『ピースとハイライト』
ピースとハイライト
もう既にリリースされてから2年近く経つのだが、今になって聴く度に涙が溢れて大変なことになっているのね。リリース当時は全然好きになれないどころか、桑田さんのあまりの変わり様にこんなことを呟いていた。
今回のサザンの新曲は2曲とも最悪というか、タイアップ以上の意義を感じない。何がしたいんだろ?
— pitti 2210 (@pitti2210) 2013, 7月 26
サザンの政治寄りのシングルは鬼門で、特に90年代の終わり頃にセールス的にも失敗している。その後ソロとかサザンのアルバムの片隅に入れていたけど、ここまで王道のアレンジで仕上げたのは今回がはじめて。でも自分は極上の夏のメロディーに毒ばかり込められているのを聴くのは辛かった。
— pitti 2210 (@pitti2210) 2013, 7月 26
なんて偉そうなことを呟いていたんだ俺は……。ただ、これは今でも同じことを思っている。
今でも「ピースとハイライト」は、2002年にソロで発表した「ROCK AND ROLL HERO」のような政治色の強い歌詞に、「波乗りジョニー」や「涙の海で抱かれたい 〜SEA OF LOVE〜」のような夏っぽいサウンドで包んだ曲だと思っている。つまり「メッセージを届けるためならどれほど甘いサウンドに包み込んでもいいのか?」というめんどくさいことを考えた。そしてずいぶん踏み込んでいるなあ、と。
希望の苗を植えていこうよ
地上に愛を育てようよ
この素晴らしい地球(ふるさと)に生まれ
悲しい過去も 愚かな行為も
人間(ひと)は何故に忘れてしまう?愛することを躊躇(ためら)わないで
それは結局のところ、上の歌詞をどれほど本当に思っているかで決まるのだと思う。はっきり言うと、僕は桑田さんが《希望の苗を植えていこうよ》と本心で歌っているのだと思えなかったのである。
ところがその1年後にリリースされた『東京VICTORY』ではこう歌った。
みんな頑張って
それ行け Get the chance!!
そして今度リリースされるアルバム『葡萄』の1曲目の「アロエ」ではこう歌う。
止まない雨はないさ
明けない夜はないさ
そういうわけで、今更気づいたのでありました。「ああ、桑田さん、本気なんだ」と。まるでジョン・レノンのように人類の平和を歌い、同時に日本の国民全員に元気を与えるような 気迫を持ってサザンオールスターズというバンドを再生させたのだと思います。2年ごしのリスペクトです。
ちなみに映像でおちょくられている安倍晋三もサザンのライブを観ていたりする。メッセージソングとしてこれだけ大きな一歩を踏み込みながら、それがあまりに誰も阻害しないのは多分サザンでしかできないことだと思う。あまりに偉大。
蛍
さてもう一つ、気に食わなかったのが、この曲が映画『永遠の0』のテーマ曲に使われていることだ。映画も原作も未見なので何も書けることがないのだが、やはり先の戦争と絡められることが僕はとても嫌だったし、今でも映画は見る気にならない。
だが、とは言っても大好きなサザンの新曲として聴くべきだったのではないかと思い、最近事あるごとに聞いているのだが、もはやこれは日本人の死生観を歌った曲であることに気づいた。
何のために己を断って
魂だけが帰り来るの?
闇に飛び交う蛍に連れられ
君が居た気がする
生まれ変われたなら
また恋もするでしょう
抱(いだ)き合い命燃やすように
涙見せぬように
笑顔でサヨナラを
夢溢る世の中であれと
祈り
自分が生まれる何十年前に終わった戦争もそうだけど、先の震災、そしてごく当たり前に訪れる人との別れとその時間の経過について歌っただけだろう。深い意味は無い。でも十分に味わい深い。そんなことに気づくのに2年かかりました。聴く度に思い浮かぶハゲの顔は消えた。それでいいのだ。最近は聞く度にいつかのaikoのようにむせび泣いてます。