PIZZICATO ONE『わたくしの二十世紀』
本当にすばらしかった。歌を中心に据えた音数の少ないアレンジのおかげで、小西さんの曲の良さが際立っていた。「何をいまさら」と言われそうだけど、小西さんの音楽は圧倒的に曲がいいのだ。世界観とか見せ方とかアレンジもいいのだが、言葉とメロディーが突出している。
ピチカート・ファイブにはグループの性質上、さまざまな成約があり、歌の良さだけに特化することはできなかった。もしくは小西さん自身興味がなかったのかもしれない。とにかく、こうやって音数の極端に少ないアレンジながら、これほどまでにゴージャスな音楽になるとは。本当にすばらしい。
まだ聴き込んでいないのだが、とにかく実質的な1曲目にあたる「私が死んでも」が本当にすばらしかった。僕が死んだ日にはこの曲を流してもらうつもり。いや、無理かもしれないけど。
私が死んでも 泣いたりしないで
どこかの誰かと 寝ちゃえばいいのよ
悲しいことなんて 誰にもあるじゃない
明日も世界は 退屈そうだし
みんな朝まで 踊っているけど
やがてどこかへ帰るの
おおたえみりさんの歌、そして斎藤葉のハープという組み合わせだけで死ねる。
これは余談だけど、小泉今日子、UA、YOU、市川実和子、ムッシュかまやつといった豪華な面々が名を連ねている中、当然のように野宮真貴の名前がそこにはない。最初はそれがひどく寂しかった。それで野宮さんの歌が恋しくなって『pizzicato five I love you』を聴いたのだが、そしたらびっくりするくらいポップでかわいらしいピチカートの音楽が待っていた。解散後に、静かなアレンジの曲を集めたコンピレーションアルバムだけど、PIZZICATO ONEよりずっと明るくてポップだった。PIZZICATO ONEのナイーヴな世界に野宮さんを呼ぶわけにいかない。小西さんがそう思ったかは定かではないけど(多分考えてもいないと思う)、でもそう思うことにした。