Alabama Shakes『Sound & Color』
アラバマ・シェイクスの音楽は新しいのだろうか。彼らの音楽を語る上で出てくるのはルーツ・ロックという用語。レッド・ツェッペリン、ジェームス・ブラウン、オーティス・レディング.etc。それからホワイト・ストライプスとの類似も指摘されている。実際にジャック・ホワイトのサード・マン・レコードからもオファーがあったとのこと。ロック、ソウル、ブルースを彼らなりにアレンジしているというレベルにとどまらず、むしろ彼らこそがロックでありソウルであるくら堂々としている。
やはりボーカルのブリトニー・ハワードの存在感は並じゃない。失礼を承知で述べさせてもらうなら、最初に彼女を見た時に性別がよくわからなかった。見た目や体格もさることながら、マツコ・デラックスのような強烈なインパクトと、同時に性別/人種が曖昧なことが彼女の大きな特徴だと思う。ちなみに彼女は白人の母親と黒人の父親の持つ。
その彼女が「Don't Wanna Fight」でこう叫んだ。
My life, your life
Don't cross them lines
What you like, what I like
Why can't we both be right?
Attacking, defending
Until there's nothing left worth winning
Your pride and my pride
Don't waste my timeI don't wanna fight no more
私の人生、あなたの人生
それらを交差させないで
あなたが好きなもの、私が好きなもの
どうして両方ともが正しいなんて言える?
戦っても守っても、勝利は残り得ない
あなたのプライドと私のプレイド
私の時間を無駄にしないで私はこれ以上戦いたくないの(拙訳)
本当にその通りだと思う。彼女は自らの正しさを主張するわけでもない。そして相手の愚かさを主張しているわけではない(例えそれが明らかだとしても)。戦うことに意味が無いことを知った上で、その放棄を心から願っている。それがポップミュージックとして歌われることに驚いた。すごく知的だと思う。2011年の日本でこのことを歌った人はいたのだろうか。
少し話はずれるが、先日のボナルー・フェスティバルでの彼らの映像を観た。堂々としたライブだったのは間違いないのだが、お客がだだっ広い空間でブリトニーの歌に聴き入っていたのが印象的だった。僕もこのアルバムを聴いている間は他のことが手につかなくなる。音楽に宿る魂が、しっかりと聴く人に届けられることを意識して作られたアルバムだと思う。