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Mr.Children『REFLECTION』

少し時間が経ってしまったけど、Mr.Childrenの『REFLECTION』について。

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間違いなくこれから先、ミスチルの最高傑作として挙げられるアルバムだと思う。「最高傑作の一つ」という書き方は矛盾しているように聞こえるが、ミスチルくらい長いキャリアを持つと時期によって最高傑作が分かれるのだ。『Atomic Heart』『深海』『IT'S A WONDERFUL WORLD』『SUPERMARKET FANTASY』同様、このアルバムは2010年代のミスチルの一つの到達点と言える。

全体的に若返っている。小林武史がプロデュースから離れたこと(実際はサウンドプロデュースとして6曲に関わり、プレイヤーとしては8曲に参加)が影響していることは度々指摘されているが、『SENSE』や『[(an imitation) blood orange]』の反動があることも間違いないだろう。特に『(an imitation)〜』は震災を経過したため、桜井が「楽しい音楽を作っていいのかわからない」状態で作られたこともあり、今作では音楽を作ることの喜びに満ちている。

逆説的な書き方だけど、やはりミスチルは歳を重ねたからこそ若返ることができたのだろう。

さぁ行こう 常識という壁を超え
描くイメージは果てしなく伸びる放物線
未来へ続く扉
相変わらず僕はノックし続ける(未完)

僕だけが行ける世界で銃声が轟く
眩い 儚い 閃光が駆けていった
「何かが終わり また何かが始まるんだ」
そう きっとその光は僕にそう叫んでる(Starting Over)

遠くへと遠くへと日常を捨て走る
まだ何も描かれてない地図を頼りに(遠くへ)

どれだけリセットしたいんだ!と突っ込みたくなる。でもこれが今の桜井であり、40代半ばの一人の男の心境なのだろう。この「未完」の《相変わらず僕はノックし続ける》は2007年の「彩り」における、

僕のした単純作業が この世界を回り回って
まだ出会ったこともない人の笑い声を作ってゆく
そんな些細な生き甲斐が 日常に彩りを加える
モノクロの僕の毎日に 少ないけど 赤 黄色 緑(彩り)

この繰り返しの日々に喜ぶことさえもできなくなった今でも、音楽を作り続けることを、ごく当たり前に歌っているのだと思う。もはや喜びも意義も見出だせなくなった現状でもルーティーンを続けるしかない地獄。困ったことに彼らにかぎらず、僕らはそのような世界を生きている。退屈で平凡な日常を受け入れる。それが正しいのかはわからないが、桜井はそれを受け入れたのだろう。

 

このアルバムはおそらく曲順に近い形で制作されたのだと思う。「Starting Over」や「未完」がかなり最近まで作られていたことや、前半の曲に小林武史が参加していることを考えると、前半の「fantasy」や「FIGHT CLUB」はおそらくレコーディング初期に作られたのではないか。

にもかかわらず、全体的にアルバムの後半のほうが再スタートへの願いが強く、バンドらしい衝動に満ちた演奏をしながらもどこか疲れた印象を感じさせる。逆に小林武史が参加した曲のほうがミスチルとして若々しく、毒を含んでいた。

仮想敵見つけ
そいつと戦ってた
誰も相手になんかしてないのに
例え敵でも 嫌いな奴でも
ひとりより まだマシだった
孤独がいちばんの敵だった(FIGHT CLUB)

皮肉。もちろん過去の自分を揶揄しているのは間違いないのだが、それを最近ライブで披露している「旅人」を彷彿させる若々しい音で鳴らしているのがおもしろい。そしてそういう桜井のめんどくさい性格が恐ろしい強度のメロディーに支えられているオープニングナンバーの「fantasy」

「僕らは愛し合い 幸せを分かち合い
歪(いびつ)で大きな隔たりも越えて行ける」
たとえばそんな願いを 誓いを 皮肉を
道連れに さぁ旅立とう
日常の中のファンタジーへと(fantasy)

終わりのない旅の先で見出した日常の中のファンタジー、それこそが今のミスチルの本質なのだろう。歳も重ねた。若いころのようなわかりやすい欲も消えた。それでも追いかけるものはまだまだ尽きない。

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