2017 BEST ALBUM
はい年末です。ベストです。年々流行とかシーンへの適応力を失っている自分に悲観的になったり、かと思いきや「いや、前からこんなもんじゃ?」と楽観的になったりと忙しい自分ですが、一年が終わりこうして俯瞰するとそれなりに影響を受けている気がします。iTunesを眺めるとライブラリには大体例年200枚ほどのアルバムがあり、実際に聴いてるのは半分で、完走はさらに半分程度だと思うのですが、その中から好んで聴いていたものを30枚選びました。「こいつはこんなふうに過ごしたんだな」「凡庸だな」みたいにほんの1分でも読んでくれた方の気が紛れていただければ幸いです。
30. 欅坂46『真っ白なものは汚したくなる』
29. Rostam『Half-Light』
28. IU『Palette』
27. Lil Peep『Come Over When You're Sober, Pt. 1』
26. Lorde『Melodrama』
25. YOUR SONG IS GOOD『Extended』
24. Bonobo『Migration』
23. iri『life ep』
22. Jay Som『Everybody Works』
21. Laura Marling『Semper Femina』
20. 柴田聡子『愛の休日』
19. KICK THE CAN CREW『KICK!』
18. HAIM『Something to Tell You』
15. Miguel『War & Leisure』
14. HYUKOH『23』
13. CHAI『PINK』
12. BUGY CRAXONE『ぼくたち わたしたち』
11. MONDO GROSSO『何度でも新しく生まれる』
10. 東郷清丸『2兆円』
9. w-inds.『INVISIBLE』
8. tofubeats『FANTASY CLUB』
7. Cornelius『Mellow Wave』
6. SZA『Ctrl』
5. Yogee New Waves『WAVES』
4. PUNPEE『MODERN TIMES』
3. yaeji『EP2』
2. 高橋徹也『Style』
基本的には作品と関係のないことなので書いても仕方がないのだが、やはり高橋徹也の近年の作品が配信されていないことは多大な損失を招いていると思う。10曲というフルボリュームのオリジナルアルバムでありながら2160円で買えるので少しでも興味があるならぜひ手にとって貰いたいが、やはり月980円で音楽が聴き放題の時代に一切の試聴できないまま買うのは難しいのは否めない。なにせYouTubeにMVが挙がっておらず、SoundCloudのページに近年の楽曲はいくつか上がっているのだが、困ったことに今作『Style』は前作『The Endless Summer』ともそのさらに前の『大統領夫人と棺』ともガラッと印象が違うのでイメージしてもらうのが難しい。敢えて言うなら定額配信にも提供されているSony時代の1stアルバム『Popular Music Album』に近く、発売前には『Popular Music Album Vol.2』が候補に挙がっていたとのことだが、やはり年齢差や技術的な違いがありすぎて比較するのも躊躇うほど変化している。ただ雰囲気は近く、穏やかで何度聴いても飽きず淡々としているのが特徴ではあると思う。
逆に言うと前2作のような派手さには欠けるのだが、リピートするうちに何一つ無駄のない、というより無駄な音さえを愛おしく思えてしまうような確かな技術に支えられた恐ろしく豊穣な世界が広がっていることに徐々に気づくはずだ。決して一度聴いただけではわからない、Apple MusicやSpotifyで消費されること、一度聴いただけでわかった気になってしまうことから必死に抗っているアルバムだということがわかる。時代錯誤である。だけどこれが音楽なのかもしれない。その可能性を僕は捨てることができない。
1. mei ehara『Sway』
may.eとして作品を発表してきた彼女がmei eharaとしてカクバリズムから2年ぶりに作品をリリースする。それだけで素晴らしいものになることを確信していたものの、想像よりもずっと良かった。キセルの辻村豪文をプロデューサーに迎え以前よりもずっと奥行きのある音楽に仕上げながらも、より細部がはっきりすることで彼女の音楽の歪さが顕になっているように思う。何度聴いても良いのに、何度聴いてもよくわからない。むしろ聴くたびにわからなくなる。でも心は晴れやか。そんな摩訶不思議かつ朗らかなアルバムが僕の2017年の支えになってくれた。