SEKAI NO OWARI『Tree』
懺悔しなくてはならないほど嫌っていたSEKAI NO OWARIに打ち抜かれた。ディズニーと形容されることが多い彼らだが、まさに音楽でありながらファンタジーを作り上げたアルバムだと思う。まるでディズニー作品やハリーポッターを観るような感覚で一枚のアルバムを堪能できる。
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ただ、正直、こういうアルバムはラルクに作って欲しかった。切に思った。2007年にリリースされた『KISS』というアルバムはまさに、ラルクが一枚のアルバムで遊園地を創りだそうとしたアルバムなのだが、その完成度は天と地ほどの差を感じさせる。もちろん楽曲ごとのクォリティではまだまだ差を感じさせるけど、アルバムトータルのコンセプト感に関しては完全にセカオワに軍配が上がったと言える。時代は変わった。
その勝敗を分けたのは、セカオワがセルフプロデュースにこだわらなかったことにあると思う。つまり自分たちの力量を過大視すること無く、任せるべきところはプロに任せるという、ポップミュージックを作る人間としてごく当たり前のことをやれているからだ。これは00年代を代表するロックバンドにはできなかったことだと思う。やっていることは初期の椎名林檎、それから最近だと大森靖子に近い。
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外部の人間の協力を得ているにもかかわらず、SEKAI NO OWARIの世界観が揺らがないのは、それだけ自分たちの個性が確立しているからだろう。にも関わらず、彼らは自分たちのエゴを過剰に投影しない。あくまでエンターテインメントであることに徹している。「銀河街の悪夢」や「Death Disco」のような内省的な楽曲もあるが、それを過剰に演出すること無く、あくまでアルバム全体に起伏を与える程度にとどめている。ロックというよりもポップミュージック寄りの印象を与えている。
しかしアルバムの終盤に到達する「RPG」で歌われていることは、セカオワがたどり着いた一つの答えだ。
空は青く澄み渡り 海を目指して歩く 怖いものなんてない 僕らはもう一人じゃない
その少し前「銀河街の悪夢」で《だって昨日も一昨日も変わろうとしてたけど 今日も僕は変われないまま今日がまた終わってく》と歌っていた深瀬が、《僕らはもう一人じゃない》と歌う。それは本当に当たり前のことなのだけど、やはり実感の伴う、強固な解答であると思う。そしてボーナストラック的に響く「Dragon Night」ではこう歌われる。
人はそれぞれ「正義」があって、争い合うのは仕方ないのかも知れない
だけど僕の嫌いな「彼」も彼なりの理由があるとおもうんだドラゴンナイト 今宵、僕たちは友達のように歌うだろう
ムーンライト、スターリースカイ、ファイアーバード
今宵、僕たちは友達のように踊るんだ
僕らはまったく個別の存在であり、時には争いも起こる。しかし今だけは友達のように歌い、踊ることができる。一人じゃない。世界の終わりからスタートした彼らが理想郷を夢見て、たとえ一瞬なのかもしれないけど、そこに到達した感動的な物語だと思う。