スコット・フランク『誘拐の掟』

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最近はずれ役がないと言われるのリーアム・ニーソンだけど、ジャウム・コレット=セラの大傑作『フライト・ゲーム』『ラン・オール・ナイト』(両方最高!)に引き続き、この『誘拐の掟』もすごくよかった。

コレット=セラ作品では凄腕なのにダメな捜査官/殺し屋を演じていたけど、今回は刑事崩れの私立探偵。特殊な技能を持っているわけでもない。そんな彼が誘拐事件の解決を依頼され、事件を追いかけることになる。

全体的に抑制された感じがすごくよかった。猟奇的な内容を含むのだがグロすぎず、サスペンなのにあまりエロくなく、物語が複雑すぎるわけでもない。登場人物がことごとく男ばかりなのに男臭すぎず、アーティスティックな映像も多少あるけど押し付けがましくない。それと1999年のニューヨークの町並みが丁寧に映し出されていたのが好印象だった。

 

ただ一箇所だけ。終盤、とてもかわいらしい女の子が、かわいらしいという理由だけで誘拐され、ひどい目に合わされるだが(ただしひどすぎない。ひどいけど)、その場面に関しては困ったことに見ている僕が完全に犯人の心境になってしまった。

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この14歳の女の子が登場した瞬間、犯人グループの一人が犯行を決断するのだが、その瞬間は見ている僕らが「それだけはやめて」と思いながらも、どこかその子がひどい目に合うことを期待してしまうのである。いや「それはお前だけだ」と言われるのかもしれないが、怖いもの見たさに近いというか。それは観ている側の潜在意識の有無にかかわらず、おそらく演出する側がそのように誘導していた。

多少のネタバレを含むが、実際にはそれほどひどいことにはならない(ひどいけど)。でもここで言いたいことは、基本的に探偵役のリーアム・ニーソン側の視点で進みながらも、犯人を含めなかなかクセのあるキャラクターが登場し、場面場面で感情移入する相手が変わるような撮り方をしていると思う。それが特に優れているというほどでもないのだが、全体的に抑制の効いた演出と細かい部分まで詰められた演出、そして魅力的なキャラクターたち。とても優れた映画だと思う。

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次は賛否が分かれてる96時間シリーズ完結編『96時間レクイエム』を観るつもり。