カモシダ『ライトマイガーデン』
すごいマンガを見つけてしまった。第67回ちばてつや賞佳作受賞作品。
一目惚れとはまさにこのこと。扉絵を観た瞬間に「あ、これおもしろそう」と思い、読み進めるうちに「うおー!おもしれー!!」とページをめくるのが止まらない、否、スクロールが止まらない。36ページを一気に読めてしまう。そして思わぬところに着地する。にもかかわらずこの清々しさ。大傑作だと思う。
なかなか挑発的な冒頭だと思う。平凡な男子高校生・二宮は誰も居ないはずの教室でビッチで有名なルゥ先輩とクラスメイトの七里(ともに女子)が普通では無いことをしている姿を目撃する。
七里「何してたって何してたって?舐めてたんですよ」
二宮「えっ」
七里「いわゆるクンニリングスというやつです」
もうこの出だしの時点で完璧。なぜこのようなことをしていたのか。気になってページが止まらない。実際ページをスクロールするたびに彼らの新たな表情が浮かび上がる。種を明かしてみればなんてことはない、ごくごく当たり前の思いがそこには込められていた。でもそれがわかるまでの他愛のない会話や彼らの行動、そして文中では言葉になることはない彼らの表情の一つ一つが、僕ら読者にいろいろなことを想像させる。まるで高校生の頃の甘酸っぱい記憶のように。本当はそんなこと経験したことがないのにね。でもやたらなつかしくなる。
絵や物語の雰囲気から黒田硫黄、田島列島が頭に思い浮かんだ。でもまあ、自分は少年マンガばかり読むような人間なので彼らと比較するのは間違っているかもしれないけど。
読み手を先読みするような小さな挑発。ガール・ミーツ・ガール・ミーツ・ボーイ。どことなく村上春樹の「ノルウェイの森」のけだるいけど象徴的な火事を彷彿させるボヤ。そして何一つ野暮なことが起こらないにもかかわらず惹きつけるその技量。どのページも大好きです。寸評はどれもわかってないと思う。次回作、短篇集、なんでもいいので。ずっと待ってます。