三谷幸喜『オリエント急行殺人事件』

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長かったよね。

三谷幸喜からしたら「大好きな名作を映像化したい」「今なら(ある程度は)おもしろく脚本化できる」ということだったのかも。それこそが第2夜における2時間使ったネタ明かしは三谷ならでは。というか、あれを許すフジテレビの度量の広さといったとこだろうか。普通は全部で90分、多くて120分のところを、その倍以上の尺でゆっくり描いている。贅沢といえば贅沢だけど、それはもう長く感じた。

三谷版「コロンボ」が「古畑任三郎」、三谷版「ポアロ」が今回の「勝呂武尊」に相当するわけなのだろうけど、このキャラの作りこみ自体は悪くない。それどころかかなりうまくやっていたと思う。野村萬斎は凄い。ポアロ自体、様々な俳優が演じてきた歴史があり、僕自身は最も有名なデヴィッド・スーシェのドラマ版しか知らないんだけど、それに勝るとは正直思えないし、彼ら自身もそこに挑もうとしていないのがよかったと思う。歴史に敬意を払いつつ、三谷版、野村萬斎ポアロ=勝呂像を作りこもうとする姿勢はよかった。野村萬斎の演技が少し気持ち悪いところが特によかったと思う。

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ただこの主役級キャストを集めるのはどうなんだろう?「有頂天ホテル」以降の三谷作品に顕著だと思うのだが、、佐藤浩市松嶋菜々子二宮和也、杏、沢村一樹玉木宏西田敏行と、配役はひたすら豪華。しかし結果的には脇役に徹した高橋克実笹野高史が輝く始末。逆に言うと主役級の俳優たちが、脇役に下がることで自由に伸び伸び演技しているとも言えるのだが、正直、よくわからなかった。

またネットでは「結末が斬新」「忠臣蔵かよ」という声が見受けられたが、あれは原作通り。しかし、だとすると、この題材を今やる意味は一体何だったのか?その辺りが曖昧なまま着地させた感じがして、結末がわかっていたものの、モヤモヤした気持ちで終わることになった。

唯一の救いは八木亜希子。そうそう、「あまちゃん」でもユイの母親を演じていた。女優としてすごく上手だった。なんでなのかしら。不思議。